Webサイトの表示速度やサーバーの応答性能は、ユーザー体験(UX)やSEOにとって非常に重要な要素です。サイトの表示が遅いと、訪問者がページを離れてしまったり、検索エンジンの評価が下がったりする可能性があります。そのため、多くの人が「どのホスティングサービスを選べば、より高速かつ安定した環境を確保できるのか?」という疑問を抱えているのではないでしょうか。
特に、レンタルサーバーを選ぶ際には 「速度」「安定性」「価格」「サポート体制」 など、さまざまな要素を比較検討する必要があります。その中でも今回は、一般的な設定を行場合に表示速度がどうなるのかを Google PageSpeed Insights を利用して評価します。
今回は、国内で特に人気の高いレンタルサーバー 「エックスサーバー」と「mixhost」 を取り上げ、一般的な設定を行った場合に Google PageSpeed Insightsのスコアがどのような結果になるのか を詳しく比較していきます。
なお、前回の記事では 「サービスの内容や特徴」 に焦点を当てて比較しました。まだご覧になっていない方は、以下のリンクからチェックしてみてください。
今回は「実際のパフォーマンス」に注目し、具体的なデータをもとに どちらのサーバーがより高速で快適な環境を提供できるのか を明らかにしていきます。
料金
具体的なスコアを見る前に、料金プランを見てみましょう。
xserver
契約期間 | スタンダード | プレミアム | ビジネス |
---|---|---|---|
3ヶ月 | 1,320円 | 2,640円 | 5,280円 |
6ヶ月 | 1,210円 | 2,420円 | 4,840円 |
12ヶ月 | 1,100円 | 2,200円 | 4,400円 |
24ヶ月 | 1,045円 | 2,090円 | 4,180円 |
36ヶ月 | 990円 | 1,980円 | 3,960円 |
*表のプランの値段は2025/03/20時点 プラン内容の詳細は次のページで確認してください。
mixhost
プラン名 | 料金 |
---|---|
スタンダード | 1980円 |
プレミアム | 2980円 |
ビジネス | 1980円 |
*表のプランの値段は2025/03/20時点。プラン内容の詳細は次のページで確認してください。
評価に用いた指標と実験
今回は、wordpressをインストールしたとき、一般的な設定を行った時にはGoogle PageSpeed Insightsがどのようなスコアになるのかということを目的に調査します。
評価指標について
Google PageSpeed Insightsでは、Webページの表示速度やパフォーマンスを複数の指標で測定します。代表的な指標は以下のとおりです。
- パフォーマンス(総合スコア)
Google独自の総合評価スコア(0~100点)。高いほど優秀。 - First Contentful Paint(FCP)
ページ上で最初のコンテンツ(テキスト、画像など)が表示されるまでの時間。 - Largest Contentful Paint(LCP)
ページ上で最も大きなコンテンツが表示されるまでの時間。ユーザーが「主要なコンテンツが表示された」と認識するタイミングを示す重要指標。 - Total Blocking Time(TBT)
ユーザーが画面を操作する際、スクリプトなどによってブロックされる合計時間。数値が低いほど操作性が高い。 - Speed Index(SI)
ページのコンテンツがどれくらい早く視覚的に表示されるかを示す指標。数値が低いほど体感速度が速い。 - サーバー応答時間
ブラウザがリクエストを送信してから、最初のバイトが返ってくるまでの時間。サーバー側の処理能力や負荷の影響を受ける。
実験概要
今回は「スマホ環境」と「PC環境」の2種類でテストを行い、それぞれの指標がどのように変化するのかを確認しました。また、標準偏差が小さいほど安定しており、大きいほど計測値にばらつきがあることを示します。
設定
共通してCocoonを使って測定を行いました。wordpressで自動生成されるサンプルページを対象として測定。
エックスサーバー
- プレミアムプラン
- 8コア・12GB
- 第4世代「AMD EPYC™」
- php 8.2(推奨設定)
- xpagespeed・Xアクセラレータ Ver.2の有効化
mixhost
- プレミアムプラン
- 8コア・12GB
- php 8.4
スマホ環境での比較結果
まずは、モバイルユーザー向けの「スマホ環境」での結果です。
パフォーマンス(総合スコア)
両者とも 90 点前後 という高い評価で、差はわずかです。ただし、安定性 という面では エックスサーバー の標準偏差が小さく、数値のばらつきが少ない点が特徴的です。mixhost
はややばらつきがあり、最小値と最大値の振れ幅が大きい傾向が見られました。
First Contentful Paint(FCP)
最初にコンテンツが表示されるまでの時間は、mixhost がやや速い という結果です。ユーザーがページを開いた瞬間に見える部分の表示速度を特に重視する場合は、mixhost
が有利と言えます。
Largest Contentful Paint(LCP)
こちらの計測でも、わずかではありますが mixhost のほうが高速 という結果でした。スマホ環境における大きな要素(画像や大きなテキストブロックなど)の表示は、mixhost
が若干優位となっています。
Total Blocking Time(TBT)
TBT は、ユーザー操作がブロックされる合計時間を示します。エックスサーバー は完全に 0 ms で、操作性において安定 している点が注目されます。mixhost
も基本は 0 ms ですが、一部で 9.8 ms 程度のブロックが発生することがあり、わずかな遅延が生じる可能性があります。
Speed Index(SI)
体感的な全体表示速度を示す Speed Index では、エックスサーバー がわずかに速い 結果となりました。ページ全体が見えるようになるまでの速度を重視するなら、エックスサーバー
に軍配が上がります。
サーバー応答時間
サーバーが最初の応答を返すまでの時間は、エックスサーバー のほうが優秀 な結果となりました。Web サイトの土台となるサーバー応答の安定性を重視したい場合、エックスサーバー
を選ぶメリットが大きいと言えます。
【スマホ環境まとめ】
スマホ環境は PC よりも通信や端末性能に左右されやすく、安定性が重要視されるシーンが多いため、安定したレスポンスを求めるなら エックスサーバー、多少のばらつきを許容しても初期表示速度を重視するなら mixhost
も候補になるでしょう。
PC環境での比較結果
次に、PC 環境での結果です。一般的に、PC はスマホより性能が高く、ネットワークもより安定しているケースが多いため、計測結果も全体的に高スコアになりやすい傾向があります。
パフォーマンス(総合スコア)
PC環境では、両サービスとも非常に高いスコア を獲得しています。ほぼ満点と言えるレベルで、通常のサイト運営においては速度面でストレスを感じることは少ないでしょう。
First Contentful Paint(FCP)
差は非常に小さく、どちらも非常に優秀 な結果です。ページを開いてすぐに何かしらのコンテンツが表示されるため、ユーザーの待ち時間はほぼ気にならないレベルと言えます。
Largest Contentful Paint(LCP)
こちらも差はごくわずか。PC環境では、ほぼ 同等レベルの速度 と考えて問題ありません。
Total Blocking Time(TBT)
PC環境では、どちらのサービスもブロック時間がほぼ発生しない結果でした。ユーザーの操作性を阻害する要因は非常に低いと言えます。
Speed Index(SI)
表示の速さを体感する指標である Speed Index においても、ほとんど差はありません。どちらを使っても軽快な表示が期待できる でしょう。
サーバー応答時間
PC 環境でも、エックスサーバー はサーバー応答時間が安定 しています。一方、mixhost
はモバイル同様にばらつきがやや大きい傾向にあり、最大で 190 ms 程度まで伸びた場合がありました。
【PC環境まとめ】
- 両者ほぼ同等の非常に優秀なパフォーマンス
- サーバー応答速度の安定性は エックスサーバー
が優位
PC環境では速度差がほとんどありませんが、長期的に見た安定性を重視するなら エックスサーバー がやや強みをもっています。
各サービスの使い分けと選ぶポイント
ここまでの比較結果から、それぞれの強みと選択ポイントを整理します。
- スマホ環境を重視する場合
- PC環境を重視する場合
- 総合的な安定性
おすすめ
以上の結果を踏まえると、「サーバー応答速度・安定性を重視するなら エックスサーバー」 が明確に推奨できます。特にスマホ環境では、初期応答が速いと体感的にもストレスが少なくなるため、ユーザー満足度に直結しやすいでしょう。
一方で、mixhost はただしサーバー応答のばらつきがやや大きいので、瞬間的に遅れが発生する可能性を考慮する必要があります。
まとめと今後の検討ポイント
- エックスサーバー
はサーバー応答が安定しており、ばらつきが少ないため、アクセス集中時でも安定した高速表示が見込めます。
- mixhost
は初期表示速度がやや優秀ですが、応答時間にばらつきがある点に注意が必要です。
- PC 環境ではどちらも非常に高いスコア を獲得しており、サーバーの応答時間以外はほほ違いはありません。
- 今後、より大規模なアクセス負荷テストなどで同時接続数が増えたときの安定性や、実際のユーザーが利用する状況に近い実機での検証も行うと、さらに詳細な比較ができるでしょう。
以上の情報をもとに、ぜひ自身のサイトの目的やユーザー層に合ったホスティングサービスを選んでください。もし「スマホユーザーが多く、ブロック時間やサーバー応答の安定性が重要」という場合は エックスサーバー が非常に魅力的ですし、短時間での爆速表示をわずかでも優先したい方は mixhost
も選択肢になるでしょう。また、エックスサーバーがphp 8.4に対応した場合には、別の結果が得られるでしょう。
参考データ:実験結果一覧
今回の実験データの統計量についてを表にまとめました。興味があれば、各指標の「平均」「分散」「標準偏差」を見比べてみてください。
ホスティング | 環境 | 指標 | 平均 | 分散 | 標準偏差 |
---|---|---|---|---|---|
xserver | スマホ | パフォーマンス | 89.2 | 0.56 | 0.75 |
xserver | スマホ | First Contentful Paint (秒) | 2.46 | 0.0784 | 0.28 |
xserver | スマホ | Largest Contentful Paint (秒) | 3.16 | 0.0064 | 0.08 |
xserver | スマホ | Total Blocking Time (ms) | 0 | 0 | 0 |
xserver | スマホ | Speed Index (秒) | 3.66 | 0.4264 | 0.65 |
xserver | スマホ | 最初のサーバー応答時間 (ms) | 108 | 56 | 7.48 |
xserver | PC | パフォーマンス | 99.6 | 0.24 | 0.49 |
xserver | PC | First Contentful Paint (秒) | 0.52 | 0.0016 | 0.04 |
xserver | PC | Largest Contentful Paint (秒) | 0.72 | 0.0016 | 0.04 |
xserver | PC | Speed Index (秒) | 0.6 | 0 | 0 |
xserver | PC | 最初のサーバー応答時間 (ms) | 100 | 0 | 0 |
mixhost | スマホ | パフォーマンス | 90 | 1.6 | 1.26 |
mixhost | スマホ | First Contentful Paint (秒) | 2.24 | 0.0024 | 0.05 |
mixhost | スマホ | Largest Contentful Paint (秒) | 3.1 | 0 | 0 |
mixhost | スマホ | Total Blocking Time (ms) | 8 | 96 | 9.8 |
mixhost | スマホ | Speed Index (秒) | 3.86 | 0.4184 | 0.65 |
mixhost | スマホ | 最初のサーバー応答時間 (ms) | 190 | 160 | 12.65 |
mixhost | PC | パフォーマンス | 100 | 0 | 0 |
mixhost | PC | First Contentful Paint (秒) | 0.54 | 0.0024 | 0.05 |
mixhost | PC | Largest Contentful Paint (秒) | 0.7 | 0 | 0 |
mixhost | PC | Speed Index (秒) | 0.64 | 0.0064 | 0.08 |
mixhost | PC | 最初のサーバー応答時間 (ms) | 154 | 984 | 31.37 |