はじめに ― そもそも「.app」とは
「.app」は Google(Charleston Road Registry Inc.)が運営する新しい汎用トップレベルドメイン(gTLD)です。名前のとおり“アプリケーション”を想起させるため、モバイル/Webアプリの公式サイトやプロモーション用ランディングページとの親和性が高い点が特徴です。また、全ドメインが常時HTTPS(TLS)通信必須というセキュリティ重視の設計が最大の売りです。
誕生までの経緯
年月 |
出来事 |
2012年 |
ICANNの「新gTLDプログラム」応募受付がスタート |
2015年2月 |
ICANN公式オークションでGoogleが2,500万ドルで落札(当時の最高額) |
2018年5月 |
一般登録(General Availability)開始 |
歴史自体はまだ10年に満たない若いTLDですが、落札額のインパクトとGoogle運営という安心感から、一気に注目を浴びました。
.appだけの“HTTPS強制”仕様
- サーバー証明書がない状態ではサイトがまったく表示されません。
- 一部の無料サーバーや静的ホスティングでは証明書自動更新が行えないケースがあるため、対応状況を必ず確認しましょう。
採用事例 ― 具体的にどんなサイトが使っている?
サービス例 |
用途 |
URL |
Cash App |
送金アプリ公式 |
cash.app |
Windy |
気象アプリ公式 |
windy.app |
Greg |
園芸サポートアプリ |
greg.app |
Puppr |
犬のしつけアプリ |
puppr.app |
これらの事例に共通するのは、サービス名=ドメイン名のシンプルさと、「“.app”を見るだけでアプリだと理解できる」直感性です。「ブラウザでアクセス→アプリストアへ誘導」という導線もわかりやすく、広告やSNSシェアでも視認性が高まります。
取得方法 ― 手続きは簡単、ただしSSL前提
- レジストラを選ぶ
- 希望ドメインを検索し、空いていれば購入(先着順)
- DNS設定とSSL証明書の発行・設置
- Let’s Encrypt など無料証明書でも可
- 証明書自動更新を忘れるとサイトが落ちるため要注意
SEO・マーケティング視点でのメリット/デメリット
メリット
- ドメイン名だけでサービス内容を連想できる(指名検索に強い)
- HTTPS強制によりChromeなどで「保護されていない通信」警告が絶対に出ない
- アプリ名+“.app”の組み合わせがまだ取りやすく、短く覚えやすいURLを確保しやすい
デメリット
- 一般層には“.com/.jp”ほど馴染みがなく、URLを口頭で伝える際に補足説明が必要
- HTTPリダイレクトや一時的な非SSL運用が許されないため、テストサイトやステージング環境の構築がやや面倒
- 一部メールサーバーでDMARC設定を誤ると配信到達率が下がるケースがある(“.app”自体は問題ないが設定ミスが目立つ)
他ドメインとの比較(2025年版)
TLD |
イメージ |
HTTPS必須 |
主な長所 |
主な短所 |
.app |
アプリ・ITサービス |
必須 |
セキュリティ強化/ブランド訴求 |
認知度が低め・SSL必須 |
.com |
商用全般 |
任意 |
世界的知名度 No.1 |
名前取り合い激しい |
.net |
ネットワーク系ほか汎用 |
任意 |
.com次点・在庫やや多い |
特徴が薄い |
.io |
スタートアップ界隈 |
任意 |
技術系やスタートアップのイメージが強い |
更新料高い |
.dev |
開発者・技術ブログ |
必須 |
開発者ブランド |
一般認知度が低い |
運用時のチェックリスト
- 証明書の自動更新
- “www有無”やHTTP→HTTPSのリダイレクトループがないかテスト
- Search ConsoleでHTTPS版をプロパティ登録
.appドメインと相性のいいサイトテーマ一覧
モバイルアプリの公式サイト
- 概要:iOS/Androidアプリの紹介、ダウンロードリンク、アップデート情報などを掲載する公式サイト
- 理由:
.app
という文字列自体が“アプリ”を意味するため、ドメイン名だけで内容が想像でき、ユーザーに直感的に訴求できる
PWA(Progressive Web App)向けWebサービス
- 概要:Webブラウザ上でアプリのように動作するサービス(例:家計簿、ToDo管理、天気予報など)
- 理由:HTTPS必須の仕様により、PWAに必要なセキュリティ条件(Service Workerの利用)を満たせる
スタートアップ/SaaSサービスのランディングページ
- 概要:新しいソフトウェアやサービスを紹介・販売するシンプルなLP(ランディングページ)
- 理由:「.com」は既に埋まっていることが多いため、短くブランディングしやすい
.app
は代替として優秀
個人開発者のポートフォリオサイト
- 概要:アプリ開発者が自作アプリや制作物を紹介するためのポートフォリオ
- 理由:開発者としてのイメージを強く出せる上、「自作アプリの紹介=.app」で一貫性が出る
デジタル商品やアプリ販売サイト
- 概要:アプリや拡張機能、テンプレート、デジタル素材などのダウンロード販売
- 理由:「安全性が高い印象」「アプリ関連の商品に合致」するため、信頼感のある販売サイトに最適
教育・学習アプリの紹介サイト
- 概要:子ども向け学習アプリ、資格学習、語学アプリなどを紹介する教育特化サイト
- 理由:セキュリティ面が強化されているため、保護者や教育機関にも安心して使ってもらいやすい
IoTやスマート家電連携アプリ
- 概要:スマート家電・IoT機器を操作するためのアプリの紹介ページ
- 理由:常にオンライン通信が必要な製品と連携するため、HTTPS必須仕様と相性が良く、ドメイン名も説明的になる
相性の良さを活かすポイント
視点 |
解説 |
信頼性 |
HTTPSが標準のため、「安全なサイト」としての印象を与えられる |
覚えやすさ |
サービス名+.app でシンプルかつ分かりやすい |
SNSや広告展開 |
ドメイン名がそのままサービス名と一致することで、シェアやクリック率向上にもつながる |
ブランド力 |
「●●.app」とすることで、技術系・アプリ系サービスだと一目で分かるブランディングが可能 |
まとめ
- .appは「アプリ=HTTPS=Google運営」という3要素で差別化されたTLD。
- 2025年時点で登録数は約75万件とまだ余裕があるため、短いブランド名や覚えやすいキーワードを確保しやすい。
- 取得手続きは通常のドメインと同じだが、SSL証明書の用意が必須という一点だけ要注意。
- アプリ公式サイトやランディングページ、セキュリティを重視するFinTech系サービスなどに特におすすめ。
- 価格面は.comより高めだが、ブランド訴求力とセキュリティで差別化できるなら十分にペイする投資と言えるでしょう。